【困った上司】報連相する部下、報連相しない上司:信頼されるリーダーが学ぶべき3つの視点

上司

「またあの上司からの指示か……やだなあ……」。

もしあなたが日々の仕事でそう感じているなら、それは決してあなた一人の問題ではありません。
命令ばかりで部下の仕事に心から興味を持たない、そしてマネジメント能力が低い上司のもとでは、組織の生産性は確実に低下し、優秀な人材の離職リスクが高まります。

これは、私が長年、職場の人間関係と生産性の課題を深く見つめてきた中で、痛感している現実です。

私の職場でも、上司は「報連相(報告・連絡・相談)を徹底しろ」と口うるさく言いますが、当の上司自身は、重要な情報を共有しない、いわゆる「報連相の非対称性」を露呈しています。
このような一方的なコミュニケーションは、部下に不満と不信を募らせ、「どうせ抵抗しても無駄だ」という無力感を抱かせます。

今回は「現場を壊すリーダー」の核心を深掘りしつつ、私自身の体験談も交えながら、マネジメント能力が低い上司の具体的な問題行動と、組織をより良くするために上司や経営者が学ぶべき具体的な行動原則を解説します。

無能上司の「丸投げ」と「責任回避」がもたらした不快感

それは金曜日の終業間際、すでに定時を過ぎ、退勤しようかと思っていた夕方17時45分の出来事でした。

私の部署のA次長が、席で談笑していたB先輩と私に声をかけてきました。A次長は普段から現場の進捗にはほとんど関心がなく、自分の業務にこもり、部下には雑に指示するタイプの人物です。

「悪いけど、これ、週明け一発目の会議資料。急ぎじゃないけど、今日中に仕上げておいてくれる?」

次長が差し出してきたのは、来週火曜日に予定されている、さほど重要ではない会議の中間報告資料の草案でした。
草案といっても、目次と数枚の未完成なグラフが貼り付けられただけの、ほぼ白紙に近い状態です。

この上司は適材適所という言葉を知らないのか

この資料作成、本来は、そのセグメントの営業事務を担当し、知識を持つCさんが担当すべき業務でした。
しかし、Cさんはこの日、プライベートの用事で定時後すぐ帰宅している状態です。

次長はCさんの状況を把握しているにもかかわらず、私たちに向かって平然と言いました。

「Cがいないから。ちょうど手が空いてそうな君たち二人でやっちゃってよ。君たちならできるだろう?」

この一言で、私の心には即座に不快感が広がりました。

「手が空いてそうだから」――。
私たちの専門性や、今抱えている他のタスクの優先順位を一切考慮せず、ただ目についた、捕まえやすかった人間に仕事を振る。
これは、まさに「適材適所」の概念が欠落した、マネジメント能力の低さの極みです。
自分のタスクを処理するために、最も安易な方法を選んだだけなのです。

雑な「丸投げ」と雑な「放置」

私たちは渋々、残業をしてその資料を仕上げました。
幸い、専門知識はなくても、なんとか形にはなったものの、内容の一部に専門的な裏付けが必要な箇所が残りました。

週明け、完成した資料を確認した次長は、一瞥すると「うん、いいんじゃない」とだけ言い、そのまま火曜日の会議に提出しました。

しかし、会議後の席で、資料の専門的な裏付けの薄さを他部門の上司から指摘されるトラブルが発生しました。

次長は慌てて席に戻ってくると、私たちの前に立ち、眉間にシワを寄せながら言いました。

「あの資料、やっぱり一部データが甘かったみたいだぞ。なんであそこでしっかり確認しなかったんだ?」

不信感が募り、仕事への意欲が削がれる

この瞬間、私の不快感は不信感へと変わりました。

「なぜあそこで確認しなかったんだ?」

本来、資料の最終的な内容確認と提出の責任を負うのは、そのチームを束ねる次長自身です。
専門的な知識がない私たちに安易に仕事を丸投げし、確認もせずに提出した責任を、私たちに押し付けようとしているのが明白でした。

「命令だけはするが、責任は取らない」「部下の状況に興味がない」無能な上司の典型的な行動を目の当たりにし、私は心底うんざりしました。
自分の努力や残業が、上司の無責任な行動の埋め合わせにされたという事実に、私は深く不快な気持ちになりました。

この上司のもとでは、努力は正当に評価されず、ただ「やらされている」という感覚だけが残ります。
このエピソードは、私の仕事に対する意欲を削ぎ、この組織に対する不信感を決定的なものにした出来事です。

信頼を失う上司の四つの行動特性と組織への致命的な影響

組織の信頼を蝕み、現場の士気を低下させる上司には、共通するいくつかの行動特性があります。
私の職場の上司は典型的な無能上司です。
そういう無能上司が組織に与える致命的な影響について深掘りします。

1. 偉そうな態度と「感謝不足」

上司からの褒め言葉やねぎらいの言葉が、なぜか「偉そうな態度」や上からに聞こえ、逆に鼻についてしまうことはありませんか。
心からの感謝や敬意が感じられない褒め方は、部下の「承認」を満たせず、単なる命令の延長として受け取られてしまいます。

真に信頼される上司は、部下の努力や成果に対し、「ありがとう」「助かったよ」といった心からの感謝やねぎらいの言葉を、タイミングよく、対等な人間関係として伝えます。
これこそが、部下のモチベーションを持続させ、エンゲージメント(組織貢献)を高める最も基本的な行動です。

2. 情報共有の欠如が招く「報連相の非対称性」

前述の通り、上司が部下には報連相を求めながら、自分自身は情報共有を怠る行為は、組織における情報透明性を著しく損ないます。
部下は「自分たちは信頼されていない」「重要な判断は常にブラックボックスだ」と感じ、上司への不信感を深めます。

現代の組織においては、上層部の意向や決定事項を正確に、迅速に、かつその背景にある理由(意思決定の根底にある考え)と共に部下に共有することが、心理的安全性を築き、自律的な行動を促す土台となります。

3. 適材適所を欠いた「丸投げ」

上司が仕事を部下に割り振る際、「手の空いている人」や「目についた人」に安易に振る行為は、部下のスキルや経験、得意・不得意といった個々の特性を無視した「適材適所」を欠いたマネジメントの典型です。

これは、部下の仕事に対する無関心の表れであり、結果として、業務の品質低下、特定の社員への過度な業務負荷、そして組織全体の生産性低下を招きます。
マネジメント能力が低い上司は、現場の実態を把握しようとせず、部下の能力を発揮させる機会を自ら摘んでしまいます。

4. 責任回避と優柔不断と待ちの姿勢

マネジメント能力が低い上司のもう一つの特徴は、「責任を取りたがらない」姿勢や「優柔不断」さです。
特にトラブル発生時や重要な意思決定の場面で決断が遅れると、部下は作業に着手できず、組織のスピード感が失われます。

部下が「この人の下では安心して働けない」と感じれば、離職者の増加や士気の低下に直結します。
真のリーダーは、結果に責任を持ち、明確な判断軸をもって迅速に意思決定を行い、その根拠を共有することで部下からの信頼を獲得します。

信頼されるリーダーになるために3つのことを意識する

よりよい職場環境と持続的な成長を実現するためには、上司や経営者が古い「支配型」の思考を捨て、新しいリーダーシップの形を学ぶ必要があります。

1. 部下の信頼を得るための基本:「誠実性」と「傾聴」

  • 話を遮らず、最後まで耳を傾けましょう。
    部下が抱える悩みや意見を否定せず、真摯に受け止めます。
  • 心理的安全性を確保しましょう。
    間違いや懸念を率直に表現できる環境、つまり心理的安全性を築くことが、イノベーションと参画を促進します。
  • 多様な意見を聞き入れましょう。
    多様な意見を尊重し、すべてのメンバーが組織の一員として価値を感じられるよう、多様性の受容を日々の行動に組み込みます。

2. 育成と権限委譲:適材適所と挑戦の機会の創出

  • 成長支援の実践
    部下の個性と得意分野を活かせるよう、力量より少し高い目標と挑戦の機会を与え、達成に向けたサポートを行います。
  • 明確な役割と裁量の付与
    手の空いている人ではなく、適性を見極めて仕事を任せ、結果だけでなくプロセスにおける権限も委譲します。
  • 定期的なフィードバック
    単に結果を評価するだけでなく、行動に対する具体的で建設的なフィードバックを適宜行うことで、部下の学習能力を高めます。

3. 透明性と説明責任:行動の「理由」を共有

不信感を払拭し、組織をまとめるには、情報の透明化が不可欠です。

なぜその決断に至ったのか、その背景にある「考え、感情、根拠」を部下に共有することで、変化への理解と支持を得ます。

自らの失敗談を共有し、弱さを見せることは、部下との共感を深め、親近感と信頼感を高めます。

まとめ

部下のモチベーションとパフォーマンスは上司の能力に完全に依存します 。

マネジメント能力の低い上司のもとでは、部下の仕事に対する意欲、生産性、そして将来のキャリアへの期待までもが削がれてしまいます 。
すなわち、部下のモチベーションは上司しだいであり、部下が本来持つパフォーマンスを発揮できるかどうかも、上司の力量しだいなのです。

会社へのマイナス影響と離職リスクの増大

「命令だけはするが、責任は取らない」「部下の状況に興味がない」といった無能上司の典型的な行動は、組織内に不信感を生み、情報の透明性を著しく損ないます 。
結果として、マネジメント能力がない上司は、業務の品質低下、特定の社員への過度な業務負荷を招き、組織全体のスピード感と競争力を失わせるという会社に甚大なマイナスの影響を与えます 。

特に、部下が「この人の下では安心して働けない」と感じれば、それは離職者の増加や士気の低下に直結します 。
つまり、マネジメント能力がない上司は、優秀な部下の離職をまねく最大の原因となるのです 。

部下自身が取るべき行動:意見表明か、次のステップか

このような状況に直面した無能上司のもとで働く部下は、自らのキャリアと精神的健康を守るために、立ち止まって考える必要があります。

  1. 建設的な意見・提言:まずは、勇気をもって上司に対し、報連相の非対称性や適材適所の欠如といった問題点を建設的に意見として表明し、改善を促すことも一つの手段です。
  2. 退職も視野に入れた自衛:しかし、上司の行動が変わらない場合、自分の努力が正当に評価されず、「やらされている」という不快な感覚が続く状況は、キャリアにとって大きな機会損失です。
    その場合は、退職も視野に入れ、自らの能力とエンゲージメントを正当に評価してくれる次の職場を探すという自衛策を真剣に考えるべき時です。

経営層とリーダーは、これらのリーダーシップの原則を学び、組織全体の信頼性と競争力を高めることが今後の企業の持続性への鍵になるのではないでしょうか?