これは、私自身の職場で今まさに起こっている、切実な問題です。
私の上司はよく「部下が思ったように動かない」「うちのチームは仕事の質が低い」と他部署のリーダーにぼやいています。
本人は私たちの部下に聞こえないように言ってるつもりでしょうが、残念ながら聞こえてしまってます。
さてチーム、または個人の仕事の成果が芳しくない、あるいは品質が低い原因は、すべて上司であるマネージャーに全責任があると、私は断言します。
特に私の職場では、上司からの指示はいつも曖昧で、仕事の要件定義も不明確なまま進められることが常態化しています。
このような「指示があいまいな上司」や「仕事の目的を明確に表現できない上司」は、正直に言って、いないほうが組織にとって有益です。
なぜなら、彼らはチームの生産性を下げ、部下の成長機会を奪う「害悪」となり得るからです。
伝えたつもりでも部下が動かない根本原因は、上司の言葉が「定義」されていないことにあります。
今回は、なぜ曖昧な指示はマネジメント失格で、部下を持つ人がいますぐ学ぶべき「言葉の定義力」とは何か、そして、それが改善されない職場から去るべき理由について、徹底的に解説します。
成果不振の全責任は上司にある:曖昧な指示が招く「認識のズレ」の正体
チームの成果が上がらない時、多くのマネージャーは「部下の能力不足」や「やる気のなさ」を原因にしがちです。
しかし、真実は違います。不振の原因は、上司が最初に行うべき「目標と期待値のすり合わせ」を怠っている点にあります。
あらゆるコミュニケーションの失敗、ひいては仕事の失敗は、「認識のズレ」によって生じます。
このズレは、上司が曖昧な言葉で指示を伝えた瞬間に発生し、部下が動けない、または期待と異なる成果物を生み出す根本原因となります。
例えば、「このプロジェクトを成功させる」という曖昧な目標を上司が掲げたとしても、上司の頭の中にある「成功」が「売上を昨年比20%アップ」であるのに対し、部下の認識が「期日までにバグのない製品をリリースすること」であれば、すでに両者のアクションプランは全く別物になります。
このような認識のズレは、特に以下の3つの曖昧な言葉が使われたときに発生します。
- 曖昧な名詞: 「競争優位性」「顧客体験(CX)」「幸福」など、人によって解釈が大きく異なる概念。
- 「〜的」な言葉: 「効果的な施策」「効率的な業務」「積極的な行動」など、具体的な行動や結果が定義されていない言葉。
- 形容詞・副詞: 「なるべく早く対応して」「たくさん資料を印刷して」「もう少し質を高めて」など、基準が不明確な言葉。
これらの言葉を使う上司は、部下からすれば「仕事の目的」を不明確に表現しており、部下を無駄な行動に駆り立てる結果を招きます。
マネジメントとは、目標を達成させるための手段を設計すること。
曖昧な言葉で指示を出し、結果としてズレが生じた場合、その指導力の欠如、つまりマネジメント能力の低さに全責任があると断じるべきです。

優秀な上司が実践する「言葉の定義力」と目標設定
では、マネジメント能力の高い上司は、どの部分を学ぶべきでしょうか。
それは、まさに前述の「曖昧な言葉」を一切排除する「言葉を定義する力」を徹底的に磨き上げることです。
優秀な上司は、指示の前に必ず「言葉の要件定義」を行います。
- ゴール(期待値)の定義:
- 何を「成功」と見なすのか?(例:「認知度アップ」ではなく「フォロワー数を3ヶ月で1万人増加」)
- 「SMARTの原則」に基づき、目標を具体的(Specific)かつ測定可能(Measurable)な指標で設定します。
- 現状の定義:
- なぜこの仕事が必要なのか?(例:単に「品質が低い」ではなく「先月の顧客アンケートで満足度が30%を下回ったため」)
- 解決策(行動)の定義:
- 「なるべく早く」を「今日の午後3時まで」や「一週間以内」といった具体的な期限で置き換えます。
- 「たくさん印刷」を「20部印刷」のように具体的な数字で明確にします。
常に上司がこのレベルで指示を出せば、部下の行動に迷いは生じず、成果の質は必然的に向上します。
上司は常に「この言葉の定義は何か?」と自問自答し、言語化する義務があるのです。

部下の成長と安心を奪う「指示の丸投げ」と「責任放棄」
曖昧な指示を出し、部下の成果に興味を示さない上司がいる職場は、部下の成長機会を奪い、組織の活力を蝕みます。
マネジメントの責任は、単に「指示を出す」ことではなく、「部下が安心して確認できる心理的な安全性」を組織に担保することです。
もし部下が「これは何部ですか?」「いつまでですか?」と確認した際に、上司が「そんなこともわからないのか」「いちいち聞くな」といった態度をとるようであれば、それは上司の側の「責任放棄」です。
指示が不明確な場合、部下は「確認する怖さ」と「間違って進める怖さ」の板挟みになります。
この環境で部下が「自分の言葉で確認する」という健全な行動を促せない上司は、マネージャーとしての役割を果たしていません。
このような職場に長くいることは、あなたのキャリアにとって大きなリスクです。
- 曖昧なゴール設定では、正当な評価がなされません。努力が報われない環境では、モチベーションが枯渇します。
- 上司からの具体的で建設的なフィードバックがないため、いつまでも自己流の「ズレた」仕事から脱却できず、市場価値の高いスキルが身につきません。
- 常に正解が分からず不安な状態で働くことは、大きなストレスとなり、早期離職やメンタルヘルス不調の原因となり得ます。
最新の労働調査では、多くの離職理由において、「給与・待遇」よりも「上司・経営陣への不満」が上位に来ています。
具体性のない指示や不健全なコミュニケーションは、従業員のエンゲージメントを低下させ、高い離職率(ターンオーバー)に直結します。
私自身の主張として、指示があいまいな上司がいたり、仕事の目的を部下にうまく伝えられない上司がいる場合、その職場からは一刻も早く去ったほうがいい、と強く推奨します。
あなたの貴重なキャリアと成長機会を、マネジメント能力の低い上司に浪費させる必要はありません。

まとめ
私たちの職場の成功は、マネジメント層の「言葉の定義力」にかかっています。
部下の仕事の質や成果が低いと感じた時、上司はまず自分の「指示」の曖昧さを疑うべきであり、その全責任は上司にあるという意識を持つ必要があります。
良い上司になるために学ぶべきは、以下の点です。
- 曖昧な言葉(〜的、形容詞・副詞)の使用を徹底的に避けること。
- 目標を数字と期限で明確に定義し、部下との認識のズレをゼロにすること。
- 部下が安心して、何度でも、テキストや口頭で指示内容を確認できる心理的に安全な環境を作ること。
もしあなたの職場の上司がこれらの努力を怠り、曖昧な指示を出し続けるのであれば、それはその職場に未来がないことの証左です。
自身の成長とキャリアを守るためにも、明確なビジョンと健全なマネジメントが行われている、より良い環境を選ぶ決断をする勇気を持ちましょう。

